介護施設の食事時間に、利用者がむせ込んだり、食べ物を喉に詰まらせたりして「ヒヤリ」とした経験はないでしょうか。
誤嚥・窒息は、ときに命に関わる重大な事故につながるおそれがあります。防止のためには、利用者の嚥下機能に合った食事の提供と、正しい食事介助、施設全体での体制づくりを組み合わせることが大切です。
ここでは、介護施設で誤嚥事故を防ぐために食事面でできる対策を中心に、現場で押さえておきたいポイントを解説します。
介護施設で起こる誤嚥・窒息事故の現状
まずは、介護施設における誤嚥・窒息事故がどの程度起きているのか、なぜ起こるのかを確認しておきましょう。
件数は少なくても重大化しやすい事故
京都市が公表している「介護保険事業所の事故報告集計(令和6年度)」では、報告された事故のうち「転倒」が1,340件(61.0%)と最も多く、「誤嚥・窒息」は46件(2.1%)でした。
割合だけを見ると多くはありませんが、誤嚥・窒息は発生から短時間で呼吸ができなくなるなど、重篤な結果につながりやすい事故です。消費者庁によると、65歳以上の高齢者の食品による窒息死亡者は年間3,500人以上にのぼり、そのうち80歳以上が2,500人以上を占めています。
高齢の利用者が多い介護施設では、日々の食事のなかで誤嚥・窒息のリスクと常に向き合う必要があります。
参照元:京都市「介護保険事業所・施設における事故報告について(令和6年度分)」(https://takuhaicook123.jp/menu/popular)
参照元:消費者庁「年末年始、餅による窒息事故に御注意ください!」(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_046/)
誤嚥事故が起こりやすい主な要因
介護施設で誤嚥事故が起こる背景には、次のような要因が考えられます。
- 加齢や疾患により、噛む力・飲み込む力(咀嚼・嚥下機能)が低下している
- 利用者の嚥下機能と、提供している食事の形態が合っていない
- 食事中の姿勢や一口の量、食べるペースが適切でない
- 配膳時に食形態やとろみの濃さを取り違えてしまう
- 餅やパン、こんにゃくなど、喉に詰まりやすい食品が提供されている
このうち多くは、食事の内容と提供方法を見直すことで予防につなげられるものです。
食事面でできる誤嚥事故防止のポイント
誤嚥事故を防ぐうえで、最も基本となるのが「利用者一人ひとりに合った食事を提供すること」です。ここでは、食事面で押さえておきたい対策を紹介します。
嚥下機能に合った食形態を選ぶ
利用者の咀嚼・嚥下機能に合わない食事は、誤嚥のリスクを高めます。食形態を選ぶ際の共通の目安として、日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」が広く活用されています。
- コード0(0j・0t):嚥下訓練食品。均質で、付着性・凝集性・かたさに配慮したゼリーやとろみ水
- コード1j:均質で、付着性・凝集性・かたさ・離水に配慮したゼリー・プリン・ムース状の食事
- コード2(2-1・2-2):ピューレ・ペースト・ミキサー食など、なめらかで、べたつかず、まとまりやすいもの
- コード3:形はあるが、舌と上あごで容易に押しつぶせるもの
- コード4:かたさ・ばらけやすさ・貼りつきやすさなどがなく、歯ぐきで押しつぶせるもの
医師や歯科医師、言語聴覚士、管理栄養士などの評価をもとに、利用者ごとに適した段階を決め、施設内で共通の基準として運用することが重要です。嚥下機能は体調や病状によって変化するため、定期的な見直しも欠かせません。
参照元:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」(https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?0917#page=5)
とろみの濃さを統一して管理する
水やお茶などのさらさらした液体は、喉を通るスピードが速く、誤嚥しやすい食品のひとつです。嚥下機能が低下した方には、とろみ剤で粘度を調整した飲み物を提供します。
嚥下調整食分類2021では、とろみを「薄いとろみ」「中間のとろみ」「濃いとろみ」の3段階に分類しています。とろみは薄すぎると誤嚥を招き、濃すぎると喉に貼りついて残りやすくなるため、スタッフによって濃さがばらつかないよう、とろみ剤の分量や作り方を統一しておきましょう。
誤嚥・窒息しやすい食品や調理に配慮する
食形態だけでなく、食品そのものの特徴にも注意が必要です。一般的に、次のような食品は誤嚥・窒息のリスクが高いとされています。
- 餅・団子など、粘りが強く喉に貼りつきやすいもの
- パン・カステラ・ゆで卵など、パサついて口の中の水分を奪うもの
- こんにゃく・かまぼこなど、弾力があり噛み切りにくいもの
- のり・わかめなど、口や喉に貼りつきやすいもの
- 高野豆腐やみかんなど、水分と固形物が分かれやすいもの
こうした食品も、やわらかく調理する、とろみあんでまとまりを持たせるなど、利用者の状態に合わせた工夫を施すことで、食べやすさと安全性を高められます。
配膳ミスを防ぐ仕組みをつくる
利用者に合った食事を用意していても、配膳時に別の方の食事や異なる食形態を提供してしまえば、事故につながるおそれがあります。
食札に氏名・食形態・とろみの段階を明記する、食形態ごとに食器やトレーの色を分ける、配膳前に複数のスタッフで確認するなど、「誰が配膳しても間違えない仕組み」をつくっておくことが大切です。
食事介助・食事環境で押さえたい対策
食事の内容とあわせて、食べるときの姿勢や介助の方法も誤嚥リスクを大きく左右します。
誤嚥しにくい姿勢を整える

首が後ろに反った姿勢は、気道に食べ物が入りやすくなります。顎を軽く引いた「頸部前屈位」を基本とし、次のような姿勢を整えましょう。
- 椅子・車いすの場合:深く腰掛けてやや前かがみになり、足の裏を床(フットサポート)につけ、膝を90度程度に曲げる
- ベッド上の場合:利用者の状態に応じて上体を起こし(ベッドアップ30度以上が目安)、枕などで頭を支えて軽く顎を引く
介助者は利用者の正面や斜め前など目線の高さをそろえられる位置に座り、立ったまま介助しないようにすることもポイントです。
一口量と食べるペースに配慮する
一口の量が多すぎると喉に残りやすく、少なすぎても飲み込みにくくなります。1回の飲み込みで喉に残らず通過できる量を利用者ごとに把握し、飲み込んだことを確認してから次の一口を運びましょう。
また、食べ始めはむせやすいため、最初にとろみのついたお茶やゼリーで口の中を潤してから食事に移ると安心です。
誤嚥のサインを見逃さず、食後のケアも徹底する
食事中のむせや咳き込み、ゴロゴロとした水っぽい声(湿性嗄声)は、誤嚥のサインである可能性があります。こうした変化に気づいたら、食事を一度中断して様子を確認しましょう。
なお、むせるなどの症状が出ないまま誤嚥している「不顕性誤嚥」もあるため注意が必要です。食後すぐに横にならず、しばらく上体を起こした姿勢を保つこと、口腔ケアで口の中を清潔に保つことも、誤嚥の予防につながります。
施設全体で取り組む誤嚥事故防止の体制づくり
誤嚥事故の防止は、個々のスタッフの注意だけに頼るのではなく、施設全体で取り組むことが求められます。
介護保険施設では、運営基準により事故発生防止のための指針の整備、委員会の定期的な開催、従業者への研修の実施が求められています。令和3年度介護報酬改定では、これらの措置を適切に実施するための担当者の設置が義務付けられたほか、組織的な安全対策体制を評価する「安全対策体制加算」も新設されました。
また、厚生労働省は介護保険施設等から市区町村へ提出する事故報告の標準様式を示しており、事故種別のひとつとして「誤嚥・窒息」が設けられています。事故やヒヤリ・ハットの情報を記録・共有し、委員会などで原因を分析して再発防止策に反映していく仕組みが重要です。
食事に関する対策では、介護職員だけでなく、看護師、管理栄養士、言語聴覚士、歯科医師など多職種で情報を共有し、利用者の食形態や介助方法を定期的に見直すことが効果的です。
食形態の管理には配食サービスの活用も選択肢に
誤嚥事故を防ぐには、利用者一人ひとりの嚥下機能に合わせて食形態を作り分け、安定した品質で提供し続ける必要があります。しかし、ムース食やミキサー食などの形態食を自前で調理するには手間と専門的なノウハウが求められ、調理スタッフの負担が大きくなりがちです。
介護施設向け配食サービスのなかには、管理栄養士が献立を作成し、常食と同じ献立でやわらか食・ムース食・きざみ食・ミキサー食などの形態食を用意できるサービスもあります。湯せんして盛り付けるだけで提供できるタイプであれば、調理経験のないスタッフでも形態食を安定した品質で用意でき、食事介助や見守りに時間を割きやすくなる点もメリットです。
導入を検討する際は、次のような点を確認しておくと安心です。
- 自施設の利用者に必要な食形態の段階に対応しているか
- 見た目や彩りなど、食欲を保つ工夫がされているか
- 管理栄養士による献立作成や、療養食加算の算定に役立つ帳票・データ提供などのサポートがあるか
- 禁止食(食べられない食材)やアレルギーへの個別対応が可能か
- 温め方や盛り付けなど、施設の運用体制に合った提供方法か
まとめ:食事と介助の両面から誤嚥事故を防ごう
介護施設での誤嚥事故を防ぐには、利用者の嚥下機能に合った食形態ととろみの提供、配膳ミスを防ぐ仕組み、正しい姿勢での食事介助を組み合わせることが大切です。あわせて、指針・委員会・研修などを通じて施設全体で事故防止に取り組む体制を整えておきましょう。
形態食の準備や品質管理に課題を感じている場合は、配食サービスの活用も有効な選択肢のひとつです。このサイトでは、独自調査した中からおすすめの施設向け配食サービスを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
おすすめ
介護施設向け
配食サービス3選

- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
(アイサービス)
- 1日当たり
- 693円(税込)~
(※一部の離島に関しては配送条件が異なる場合あり)
- 独自の調理方法により、少量のムース食でも十分な栄養価が摂れる
- 1施設1担当の専任制で、管理栄養士が献立作成から監査対応の帳票準備、栄養マネジメントまでサポート
- 特養での導入において、療養食加算取得率100%を達成(※2010年2月〜2026年4月実績)
- デイサービス
- グループホーム
(グローバルキッチン)
- 1日当たり
- 685円(税込)~
(※一部の離島に関しては配送条件が異なる場合あり)
- 昼食のみや単品のみ、1人前、行事食の単発購入にも対応
- 注文から最短3日で納品なため、急な食数増減にも対応できて無駄がない。納品日は曜日・時間帯指定可能(※日曜を除く/地域により金曜・日曜を除く)
- 契約制ではなく「会員登録制」なため、事前登録しておけば必要な時のみ発注可能
- サ高住
- 有料老人ホーム
(クックデリ)
- 1日当たり
- 740円(税込)~
(※一部の離島に関しては配送条件が異なる場合あり)
- 料理研究家が企画段階からテスト調理・サンプルチェック・改良まで監修
- 季節の行事や二十四節気、旬の食材を活かした献立を考案し「食の楽しみ」を演出
- 施設の状況に合わせ、「朝食だけ」「土日だけ」「一品だけ」など部分導入が可能
※参照元:アイサービス公式HP(https://ai-service.jp/rakuraku-gozen/)2026年6月1日調査時点

