「厨房スタッフの確保が難しくなってきた」
「食事にかかる業務やコストを見直すしかない」
こうした理由から、介護施設の食事提供を配食サービスへ切り替えることを検討する施設も少なくありません。
一方で、毎日3食を途切れさせずに提供し続ける必要があるため、「何から始めればいいのか」「切り替えのときに何に気をつければいいのか」と不安に感じる施設も多いのではないでしょうか。
ここでは、介護施設が配食サービスへ切り替えるまでの流れを6つのステップに分けて解説し、切り替え時に確認しておきたいポイントもあわせて紹介します。
配食サービスへの切り替えを検討するタイミング
配食サービスへの切り替えは、施設の運営体制や利用者の状況が変わるタイミングで検討されることが多くあります。代表的なケースを見ていきましょう。
厨房スタッフの確保が難しくなったとき
調理員の退職や採用難で、自前の厨房を維持することが難しくなるケースです。少人数で3食を回していると、急な欠勤ひとつで食事提供が立ち行かなくなるおそれもあります。
完全調理済みの食事を届けてもらう配食サービスであれば、施設での作業は温め直し(再加熱)と盛り付けが中心になるため、調理の専門スキルがなくても食事を用意しやすくなります。
食事提供の方法やコストを見直すとき
食材費や人件費、光熱費の上昇などを背景に、食事提供の方法やコスト全体を見直すタイミングも、切り替えを検討するきっかけになります。給食会社への委託や自前調理を続けるか、配食サービスを取り入れるかは、施設の規模や人員体制によって最適な形が異なります。
なお、給食会社のなかには完全調理済みの食事(配食)を提供している会社もあり、「委託か配食か」の二択ではなく、自施設に合う組み合わせを探すという考え方も大切です。それぞれの特徴は、下記の記事で詳しく紹介しています。
利用者の食形態や食数の変化に対応したいとき
重度の利用者が増えてムース食やミキサー食などの形態食が必要になった、デイサービスで日によって食数が大きく変わる、といった変化も見直しのきっかけになります。
配食サービスには、形態食のラインナップが豊富なもの、1食単位や必要なときだけ発注できるもの、「朝食だけ」「土日だけ」など部分的に導入できるものなどがあり、施設の課題に合わせて使い方を選べるのが特徴です。
配食サービスへ切り替えるまでの流れ【6ステップ】
ここからは、配食サービスへ切り替える際の一般的な流れを紹介します。具体的な手順や期間はサービスによって異なるため、検討中の会社にも確認しておきましょう。
STEP1:自施設の現状を把握する
まずは、配食サービスに何を求めるのかを整理するために、現在の食事提供の状況を洗い出します。
- 1日あたりの食数(朝・昼・夕・おやつ)と、曜日による変動
- 食形態ごとの人数(常食・きざみ食・ムース食・ミキサー食など)
- 減塩食などの療養食や、アレルギー対応が必要な利用者の人数
- 食事の保管・温め直しに使える設備やスペース(冷凍・冷蔵庫の容量、湯せん用の鍋、スチームコンベクションオーブンなど)
- 盛り付け・配膳を担当できるスタッフの人数と時間帯
- 現在の食事にかかっている費用(食材費・人件費・光熱費など)
ここで整理した情報は、資料請求や見積もりの際にもそのまま役立ちます。管理栄養士や介護職員など、食事に関わる職種の意見も聞いておくと、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。
STEP2:情報収集・資料請求をする
STEP1で整理した条件をもとに、候補となる配食サービスを探します。配送エリア、対応している食形態、保存方法(冷凍・チルド)、発注方法、料金体系などを比較し、複数社から資料を取り寄せておくと比較がしやすくなります。
STEP3:無料試食で味と食形態を確かめる
多くの介護施設向け配食サービスでは、無料の試食サンプルを用意しています。資料だけではわからない味付けや量、見た目、形態食のやわらかさやまとまりやすさを、実際に確かめておきましょう。
試食の際は、施設のスタッフだけでなく、可能であれば利用者にも食べてもらうと、より実態に近い評価ができます。あわせて、再加熱や盛り付けにかかる時間など、現場での扱いやすさも確認しておくと安心です。
STEP4:見積もりを取り、契約内容を確認する
候補を絞り込んだら、自施設の食数や食形態の内訳を伝えて見積もりを依頼します。料金とあわせて、次のような条件も確認しておきましょう。
- 最低注文数や契約期間の有無
- 発注の締め切りと、食数変更・キャンセルの受付期限
- 配送の頻度・曜日・時間帯、送料
- 献立表や栄養価計算書など、提供される帳票の範囲
- 冷凍庫など、必要な設備の貸し出しの有無
STEP5:施設内の運用を準備する
契約が決まったら、配食サービスを使った食事提供の運用を整えます。
- 届いた食事の保管場所の確保(冷凍庫・冷蔵庫の容量)
- 再加熱・盛り付け・配膳の手順書づくりと、担当スタッフへの共有
- 食札や献立表の運用、食形態の取り違えを防ぐ確認方法の決定
- 利用者やご家族への説明
とくに再加熱の温度や時間は、衛生管理と品質の両面で重要です。配食サービス会社が推奨する方法を手順書に落とし込み、誰が担当しても同じ手順で提供できるようにしておくことが大切です。
STEP6:試行期間を経て本格導入する
いきなりすべての食事を切り替えるのではなく、昼食だけ、一部のユニットだけなど、範囲を限定して試行してから広げていく方法もあります。
導入後は、利用者の喫食量や残食、むせ込みの有無、スタッフの作業時間などを確認し、献立や食形態、発注数を調整していきましょう。配食サービス会社の担当者や管理栄養士に相談できる体制があると、見直しもスムーズです。
切り替え時に確認しておきたいポイント
毎日の食事を止めずに切り替えるために、次のポイントもあらかじめ確認しておきましょう。
現在の契約内容と切り替えのスケジュール
給食会社に委託している場合や、食材の仕入れ先と取引がある場合は、現在の契約の解約条件(解約の申し出期限など)を確認したうえで、切り替え日を決める必要があります。
切り替えの前後で食事提供に空白期間が生まれないよう、配食サービスの初回納品日から逆算してスケジュールを組みましょう。不安がある場合は、一定期間だけ現在の方法と併用するのもひとつの方法です。
食形態の基準をそろえる
食形態の呼び方やかたさの基準は、施設ごとに独自に決めていることも少なくありません。切り替えの際は、自施設で使っている食形態と、配食サービスの食形態がどのように対応するのかを事前にすり合わせておくと安心です。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会の「嚥下調整食分類2021」などの共通の基準も参考にしながら、試食や資料、担当者への相談を通じて、利用者一人ひとりに合う食形態を確認しておきましょう。
参照元:日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」(https://www.jsdr.or.jp/wp-content/uploads/file/doc/classification2021-manual.pdf?0917#page=5)
療養食加算などの加算や帳票への影響
療養食加算などを算定している施設では、切り替え後も算定を続けられるかが気になるところです。療養食加算の算定要件には、施設内の厨房で調理することは含まれていないため、医師の食事箋に基づく療養食の提供と、管理栄養士・栄養士による管理が行われていれば、配食サービスを活用しながら算定することも可能です。
療養食への対応の仕方はサービスによって異なり、献立や栄養価などのデータ、帳票類を提供して、施設の管理栄養士が食事箋に沿って調整しやすくしているサービスもあります。加算の算定に必要な書類やデータをどこまでサポートしてもらえるかを、契約前に確認しておきましょう。
配送条件と保管スペース
配食サービスの食事は、冷凍またはチルド(冷蔵)で届くのが一般的です。冷凍タイプは長期保存できるものが多く、まとめて納品してもらえるため、在庫を持ちながら必要な分だけ使えます。
保管には冷凍庫のスペースが必要ですが、冷凍庫の貸し出しを行っているサービスもあります。チルドタイプは消費期限が比較的短いため、配送の頻度や受け取りの体制を確認しておきましょう。
配送エリアや配送曜日、悪天候時の対応なども、サービスごとに異なります。施設の立地や受け取りの時間帯と合うか確認しておくと安心です。
衛生管理と緊急時の対応
食事を提供する施設として、衛生管理は切り替え後も欠かせません。配食サービス会社がHACCPに沿った衛生管理を行っているか、食品安全に関する認証を取得しているかなど、製造時の衛生管理体制に加え、施設内での保管温度の管理や再加熱の記録など、自施設側で行う衛生管理も確認しておきましょう。
また、災害時や配送が遅れた場合に備えて、非常食の備蓄や代替の食事提供の方法を決めておくことも大切です。
行政への届出が必要になる場合もある
一定以上の食数を継続的に提供している施設は、健康増進法に基づく「特定給食施設」にあたります。特定給食施設は、1回100食以上または1日250食以上の食事を提供する施設とされており、届け出た内容に変更があった場合は、変更の日から1か月以内に保健所へ届け出る必要があります。
変更届の対象となる事項は自治体の様式で定められており、たとえば栃木県の記入要領では、給食の運営方式(直営から委託など)や委託先の変更が変更事項として挙げられています。配食サービスへの切り替えによって届出内容が変わるかどうかは、施設の所在地を管轄する保健所に事前に確認しておくと確実です。
なお、特定給食施設にあたらない規模の施設でも、自治体によっては給食施設として届出や報告を求めている場合があります。
まとめ:準備を整えて、無理のない切り替えを
介護施設の食事を配食サービスへ切り替える際は、現状把握→情報収集・資料請求→無料試食→見積もり・契約→運用準備→試行・本格導入の流れで進めると、食事提供を止めずにスムーズに移行しやすくなります。
あわせて、現在の契約の解約条件や食形態の基準、療養食加算の運用、配送・保管の条件、行政への届出なども事前に確認しておきましょう。
配食サービスは、対応している食形態や発注のしやすさ、サポート体制などがサービスによって大きく異なります。このサイトでは、独自調査した中からおすすめの施設向け配食サービスを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
おすすめ
介護施設向け
配食サービス3選

- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
(アイサービス)
- 1日当たり
- 693円(税込)~
(※一部の離島に関しては配送条件が異なる場合あり)
- 独自の調理方法により、少量のムース食でも十分な栄養価が摂れる
- 1施設1担当の専任制で、管理栄養士が献立作成から監査対応の帳票準備、栄養マネジメントまでサポート
- 特養での導入において、療養食加算取得率100%を達成(※2010年2月〜2026年4月実績)
- デイサービス
- グループホーム
(グローバルキッチン)
- 1日当たり
- 685円(税込)~
(※一部の離島に関しては配送条件が異なる場合あり)
- 昼食のみや単品のみ、1人前、行事食の単発購入にも対応
- 注文から最短3日で納品なため、急な食数増減にも対応できて無駄がない。納品日は曜日・時間帯指定可能(※日曜を除く/地域により金曜・日曜を除く)
- 契約制ではなく「会員登録制」なため、事前登録しておけば必要な時のみ発注可能
- サ高住
- 有料老人ホーム
(クックデリ)
- 1日当たり
- 740円(税込)~
(※一部の離島に関しては配送条件が異なる場合あり)
- 料理研究家が企画段階からテスト調理・サンプルチェック・改良まで監修
- 季節の行事や二十四節気、旬の食材を活かした献立を考案し「食の楽しみ」を演出
- 施設の状況に合わせ、「朝食だけ」「土日だけ」「一品だけ」など部分導入が可能
※参照元:アイサービス公式HP(https://ai-service.jp/rakuraku-gozen/)2026年6月1日調査時点

