高齢者向けの食事は、食べやすさや食塩の量、栄養価など、気にしなければならないポイントが多く手間がかかるものです。嚥下しやすくおいしいものを提供したいと考えると、日々の調理や献立は大変な作業でしょう。
さらに、ここ数年のコロナ禍で、高齢者施設ではより厳しい感染症対策を行わなければなりません。毎日の食事の手間を少しでも軽減できたら、人手の足りない施設でも職員さんのストレスを減らせるはずです。
今回、高齢者施設向けに食事を提供しているクックデリのオンライン試食会に参加してきました。
クックデリの食事はとにかくおいしいと評判です。食事の調理から実食まで行った正直な感想をお伝えしたいと思います。
今回お試しした食事
試食会に申し込むと、試食会の3日前に当日いただく食事が届きました。メニューは次の通りです。
- きゅうりとねぎの塩だれ和え
- ほうれん草の白和え
- さばの塩焼き
- ボイルでサクッとコロッケ
- 鶏もものから揚げ
- ソフト食:エビの生姜煮
- ソフト食:副菜セット(バターコーン・洋風トマト煮込み)
すべての料理は冷凍で届きました。コロッケやから揚げといった揚げ物含まれているので、調理後の食感や味わいが気になります。ほかにも、一度食べてみたかったソフト食が入っていたので、試食会の日を楽しみにしていました。
食事の調理方法
いただいた「調理手順書」を見ながら、試食会の40分前から調理を始めました。
調理といっても、冷凍の食品を解凍すればそのまま食べられるようになっています。ただし、種類によって湯煎・流水と、解凍方法が異なりました。
湯煎解凍
主菜とソフト食は温かい食事なので、湯煎で調理をします。
コロッケ・さばの塩焼き・鶏のから揚げは、大きな鍋に入れて沸騰したお湯の中で15~20分ほど湯煎します。揚げ物は20分、さばは15分ということでしたが、実際にはすべてを大鍋に入れて20分ほど湯煎しました。
ソフト食は、主菜を湯煎したあと、火を切った状態の鍋に入れて15分ほどで解凍できます。
冷凍食品の調理方法としてはレンジを使うケースも多く、最初は湯煎での調理は面倒なのではないかと感じました。
しかし、大きな鍋さえあれば一度に調理ができるので、想像していたほど難しくありませんでした。また、一般的な調理とは異なり、火をかけている間もずっと火元を確認したりかき混ぜたりする必要がないので、配膳などの作業を同時並行で行えたのも魅力だと感じます。
流水解凍
湯煎で調理している間に、冷菜2品は流水解凍しました。パウチのままの状態で食品をボウルに入れ、流水で15分解凍します。大きなボウルがあれば一気に調理できるので、入所者の多い施設では効率的なオペレーションが可能だろうと感じました。
湯煎解凍と流水解凍が完了したら、それぞれのパッケージを切って盛り付けます。今回冷菜2品は3人前ずつ入っていました。冷菜は流水解凍後に、味が全体にまわるように混ぜてから盛り付けるとよいそうです。
すべての調理を終えて、試食会に臨みました。
試食会の感想
今回はオンライン試食会だったので、クックデリさんの会議室とZoomを繋いで説明を聞きながら1品ずつ試食させていただきました。
疑問点や率直な感想にも、ご担当者様がにこやかに回答してくださったのが印象的でした。
ここからは、食事の感想や料理のこだわりポイントをご紹介します。
きゅうりとねぎの塩だれ和え
しんなりしてると思いきや…
最初に冷菜から試食しました。食べる前は「一度冷凍しているのできゅうりがしんなりしているだろう」とイメージしていましたが、実際に食べてみると生きゅうりのシャキシャキ感が残っていました。噛むほどに口の中で「ザクザク」と音が鳴るくらいの歯ごたえです。
また、生姜の風味や中華風の味付けがしっかりあって、塩分控えめと思えないほどの満足感でした。
きゅうりのシャキシャキ感が気になり、調理方法を伺いましたが、企業秘密だそうです。この食事は、野菜のシャキシャキ感を上手に残して加工されていることに感心しました。
ほうれん草の白和え
出汁の旨みを感じる味わい
ほんのり甘い白和えは、しっかりと出汁が効いていて、デパートの地下街で販売されているお惣菜のような高級感すらありました。冷凍だったのに、バサバサ感がなくしっとりとしているので、口当たりもよかったです。
さばの塩焼き
味だけじゃなく中身にも秘密アリ
脂が乗っていてふっくらしていました。一度冷凍した魚は身がパサパサになってしまうというイメージがありましたが、そういった嫌な食感はありません。生の魚を調理した以上のジューシーさを感じました。
また、さばの身には一切骨がありませんでした。質問したところ、クックデリで使っている魚はすべて手作業で1本1本骨を取り除いているそうです。実は多くの食品工場では、骨を溶かす薬品を使って、魚の骨取りをするのが一般的なのだとか。しかし、クックデリでは安全にこだわっていて、人の手で骨を取っているそうです。
また、漁法にもこだわりがあって「まき網漁」を採用しています。まき網漁とは、数隻の船団を組んで魚の群れを取り囲むように漁獲する漁業のこと。魚を傷付けず水揚げできる漁法です。
ボイルでサクッとコロッケ
衣とお肉は今までにない口当たり
コロッケは湯煎調理をしたのに衣がサクサクで、揚げたてのおいしさを味わえました。北海道産のじゃがいもを使用していて、具にはほんのりと甘みを感じられます。ソースを付けなくても十分においしくいただけました。
クックデリでは、高齢者が食べやすいように、コロッケに工夫をしているそうです。
工夫の1つ目が、きめの細かい衣を使っていること。サクサクした目の粗いパン粉を使うと、高齢者が飲み込みにくくなるので、衣を柔らかく仕上げています。2つ目の工夫としては、コロッケの中身の具を細かくしていること。じゃがいもに牛肉も混ぜられていますが、しっかり噛まなくても飲み込めるようになっています。
鶏もものから揚げ
高齢者にも安心のやわらかさ
鶏もものから揚げはにんにくと生姜の風味が効いていて、塩分控えめとは思えないしっかりとした味わいでした。高齢者向けの食事というと、薄味で病院食に近いイメージがありますが、しっかり味の付いたものが好きだという高齢者も実は多い気がします。この味付けは、高齢の方が喜んで食べるのではないかと感じました。
また、見た目はスーパーなどで販売されているお惣菜のから揚げと変わりませんが、実際に食べてみると柔らかくふんわりしていました。高齢者が食べやすいように、鶏肉の皮をすべて取り除いているので、硬さがないのだと教えてもらいました。
ソフト食:海老の生姜煮・副菜セット(バターコーン・洋風トマト煮込み)
色も味も、まるでフレンチ!
ソフト食は初めていただくので、試食をとくに楽しみにしていました。まず、調理後に盛り付けたところ、見た目の色鮮やかさやかわいらしさに魅力を感じました。かわいい見た目もクックデリならではのこだわりだそうです。
実際に試食してみると、より驚きがありました。まずは海老の生姜煮をいただきました。
料理から漂う生姜の香りと濃い目の味に、思わずご飯が欲しくなるほどでした。聞くと、この食事はあえて濃い目の味付けにしているそうです。おかゆと一緒に食べる食事なので、おかゆを食べ進められるように味を濃くしているとのこと。なかなか食が進まない方も量を食べられるようになって、実際に体重が増えたという人もいらっしゃるそうです。
副菜セットのバターコーンは、コーンスープを固めたような、ほんのり甘みのあるお味でした。洋風トマト煮込みは、想像よりもさまざまな野菜の味わいを楽しめる一品でした。
試食会で聞いたクックデリの特徴と他社との違い
試食会で聞いたクックデリの特徴や他社との違いで、印象的だったことをご紹介します。
通常の配食サービスでは、数日分の食材がまとまって届けられることが多く、食材がまとめて届けられた後、1日ごとに食事を仕分けて収納する作業が発生します。
一方、クックデリではこのオペレーションに目を付け、予め1日ごとに仕分けされた状態で届けられるそうです。届いた中身は仕分け不要でそのまま収納できる点は、介護現場からもお喜びの声をいただくことも多いとおっしゃっておりました。
また、すべての食事は調理済みで解凍するだけで食べられます。簡単に食事の準備ができるので、人手が不足している施設でも重宝されています。とくに、ここ数年のコロナ禍では、施設のスタッフが自宅待機状態になることもあり、少ない人員でのオペレーションを求められることもあるはずです。そういった場合でも、湯煎や流水解凍で食べられるクックデリの食事は、冷凍庫にあると強い味方になります。
今回の食事は試食会用なので、少量パックでした。しかし、実際に施設に届ける食事は1~5人前、3~10人前などがあり、利用者の人数に合わせて届けるそうです。また、種類によって1パッケージあたりの分量が異なるため、実際の利用者数よりも少し多めに届けることが多いとのことでした。
例えば、利用者が9人だった場合は3人分の料理であれば3パッケージお届けしますが、1パッケージ5人分入っている料理の場合は、パッケージ2つ(つまり10人分)が届くことになります。多めに届いた場合も、お支払いは注文した人数分だけの金額なので、良心的だと感じました。